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妊娠中のDHA、時期別に飲み方を変えていますか?
栄養編集チーム 管理栄養士
公開日
2026.04.17
最終更新日
2026.04.17
「DHAも、毎日ちゃんと飲んでいます!」そう話してくれるお母さんに、ぜひ一度確認してほしいことがあります。 「その飲み方、今の週数に合っていますか?」
DHAは「とにかく飲めばいい」ものではありません。妊娠の時期によって、体の中での役割がまったく変わります。 今日は最新の医学論文をもとに、わかりやすく一緒に整理していきましょう。
妊娠初期(0〜13週):「お母さん自身の貯金(DHA)」を作る時期
「まだお腹も出ていないし、赤ちゃんも小さいから、DHAはもう少し後でいいかな」
実はこれ、少しもったいない考え方なんです。
初期のDHAは、赤ちゃんに直接届くというよりも、赤ちゃんへの栄養の通り道である「胎盤の血管網」を健やかに作るために使われます。家で言えば、配管工事の時期。この土台がしっかりしていないと、後からどんなに栄養を届けようとしても届きにくくなってしまいます。
さらに、お母さんの体はこの時期から後期に備えてDHAを脂肪組織にストックし始めます。(1)
妊娠後期、赤ちゃんの脳が急成長するとき、ものすごい量のDHAが必要になります。その「貯金」を今のうちから少しずつ積み上げておくことが、後の母体の負担を減らす鍵になります。
妊娠中期(14〜27週):赤ちゃんが「優先的に受け取る」時期
中期になると赤ちゃんの中枢神経(脳・脊髄)と網膜が急激に発達し始めます。そこで胎盤が「能動輸送」という働きをスタートさせます。(2)
能動輸送とは?
普通、物質は「濃いところ」から「薄いところ」へ自然に流れます。でも胎盤はそれに逆らって、お母さんの血液中のDHAを強制的に赤ちゃん側へ引き込む特別な仕組みを持っています。まるでポンプでお母さんからDHAを吸い取るようなイメージです。
つまり、摂取量が足りないと赤ちゃんはお母さん自身の脳や血液からDHAを奪っていきます。
そもそも、DHAは細胞膜や神経の情報伝達に欠かせない脂質です。DHAが不足すると、集中力の低下や、考えがまとまりにくくなるといった状況が現れることがあります。(2)
妊娠中に感じる「なんとなくぼーっとする」「言葉が出てこない」という感覚は、体が赤ちゃんのために自分から大量の栄養を吸収するサインかもしれません。
だからこそ、この時期は意識的にDHAの摂取量を増やすことが大切です。 赤ちゃんのためだけでなく、お母さん自身を守るためにも。
妊娠後期(28〜40週):DHA最も重要になる時期
後期は赤ちゃんへのDHA蓄積がピークを迎えます。脳の神経回路が猛スピードで完成に向かうこの時期、DHAの重要性は言うまでもありません。
コクランレビューでは、オメガ3脂肪酸が早産リスクを下げることが示されています。その理由は「EPA」です。
ここが特に伝えたいことです。多くのDHAサプリにはEPA(エイコサペンタエン酸)も含まれています。
EPAによる血液をサラサラにする作用が、出産時の出血を増やすリスクにつながる可能性があるからです。36週以降は、 EPAの摂りすぎに注意が必要です。
この時期は「EPA 0(ゼロ)の高純度DHA」に切り替えることが、医学的にも推奨されています。赤ちゃんの脳を守りながら、お産も安全に——両方を叶えるための、大切な選択です。
Q.DHAの摂りすぎで赤ちゃんに悪影響が出ない?
この不安を感じるのは、それだけ赤ちゃんのことを真剣に考えているからこそです。
結論からお伝えすると、DHAが胎児に「過剰症」を引き起こすことは極めて稀です。
なぜなら、胎盤が賢い「ゲートキーパー(門番)」として働き、赤ちゃんに必要な量だけを調整して届けてくれるからです。
本当に注意すべきリスクは、DHAの量そのものではなく——
-
低品質な魚油に含まれる重金属(水銀など)
-
過剰摂取によるビタミンAの蓄積
-
前述した後期のEPA過剰(出血リスク)
これらです。だからこそ、成分が高度に純化された、信頼性の高いサプリメントを選ぶことが何よりも大切なのです。
まとめ:時期に合わせた「正しい選択」が、お母さんと赤ちゃんを守ります
|
時期 |
DHAの主な役割 |
注意点 |
|
初期(0〜13週) |
胎盤の血管網づくり・母体への貯金 |
早めに始めることが大切 |
|
中期(14〜27週) |
赤ちゃんの脳・神経・網膜の発達 |
摂取量を意識的に増やす |
|
後期(28〜40週) |
DHA蓄積のピーク・早産リスク低下 |
36週以降はEPA 0のDHAに切り替え |
お母さんの体は、黙って自分を削ってでも赤ちゃんに栄養を届けようとします。だからこそ、ご自身の体を守るためにも、時期に合わせた正しいDHAの選び方を、ぜひ意識してみてください。
ヘルスカレッジ栄養編集チームは、管理栄養士や食の専門家が集まり、最新の栄養情報をわかりやすく、毎日の生活に役立つ形でお届けしています。
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参考文献
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