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DHAの効果とは?効率的な摂取方法を解説します

医療編集チーム 医師
公開日
2025.01.08
最終更新日
2025.02.19
DHAは魚介類の脂質に多く含まれる脂肪酸の一種です。認知機能を高め、脳の発育や機能の維持に重要な栄養素とされています。
DHAは体内で合成することができず、食事から摂取しなければならないため、「必須脂肪酸」の一つとされています。
今回の記事では、DHAが持つ様々な効果について解説していきます。
DHAの基本情報について
DHAとは?
DHA(ドコサヘキサエン酸)は体内で合成することができない「不飽和脂肪酸」のうちの一つです。不飽和脂肪酸の中でも、DHAは「オメガ3脂肪酸」に分類されます(1)。
オメガ3脂肪酸とは?
オメガ3脂肪酸には、DHAのほか、EPA(イコサペント酸)やα-リノレン酸があり、α-リノレン酸が体内でEPA、さらに、DHAへと変化します。
ただ、ヒトの体内で合成される割合は非常に少なく、食物から摂取しなければならないため、オメガ3脂肪酸は「必須脂肪酸」と呼ばれています。
DHAはなぜ必要なのか?
DHAは脳や目の網膜などの組織を構成する重要な成分であり、脳や神経組織の発育や機能維持の効果が期待されます。
子供から大人まで、ひいては妊娠中の胎児のときから高齢になるまで、生涯摂り続けなければならない成分です(2)。
DHAが不足すると、記憶力や学習能力が低下する、子供の脳の発育に影響する、血液がどろどろになり、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まるなどの事象が報告されています(3)。
だからといって、DHAを摂り過ぎてはいけません。DHAの摂り過ぎによる影響については「DHAの副作用は?摂り過ぎたらどうなるか?」の項で解説します。
DHAの効果とは?
DHAは神経細胞や血管を活性化させて、知的機能や心血管系の疾患予防など、多くの作用を有することが知られています。数あるDHAの効果は次の通りです。
赤ちゃんの発育を促す
DHAは赤ちゃんの発育、特に、脳の発達や機能の維持に重要な栄養素です。小児期の発達中の脳ではDHAが蓄積することから、脳の発達に直接影響していると考えられています。
また、妊娠中の母親のDHAの状態と、生後3カ月時点での乳児のDHAの状態が強く関連しており、小児期のIQスコアにも影響していました(4)。
従って、生後の赤ちゃんだけでなく、妊娠前や妊娠中の母親もDHAを積極的に摂取することで、胎児の成長と脳の発達を促進させることが示唆されています。
これらの研究結果に基づき、日本で販売されているほぼすべての粉ミルク商品にオメガ3脂肪酸が添加されています(5)。
認知機能を向上させる
DHAは神経細胞を活性化させ、認知機能の向上や維持に役立ちます。
認知機能に関する研究では、魚の摂取量が多いほど、加齢や認知症による認知機能の低下が抑えられることが認められています。
さらに、中枢神経疾患であるアルツハイマー病やパーキンソン病にかかっている人は魚の摂取量が少ないことも報告されています(6)。
加齢による脳の機能の低下は免れられませんが、DHAを積極的に摂取することで、少しでも予防することができます。日頃の食事に積極的に魚を取り入れましょう。
脂肪燃焼を促進する
脂肪細胞は、体内の余分な脂肪を蓄える「白色脂肪細胞」と、余分な脂肪を熱に変換して外部に放出する「褐色脂肪細胞」の2種類に分類されます。
DHAには、白色脂肪細胞の炎症を促進させ、褐色脂肪細胞の機能を活性化させることによって、脂肪燃焼を促進させる効果が認められています(7)。
以上のことから、DHAはダイエット効果も期待できる栄養素といえます。体重を減らしたい方は「食べる量を減らす」ではなく、「魚をたくさん食べる」を意識しましょう。
血液をさらさらにする
食生活の乱れや運動不足などにより、血中の糖質や脂質が増えると、血液がどろどろになります。どろどろな状態が続くと、血液が固まって血管を狭くしたり、最悪の場合、血管を塞いでしまうこともあります。
血管が狭くなって、心臓に届く血液が減少し、体全体の血液のめぐりが悪くなる病気が「狭心症」です。
また、固まった血液が血管を流れて、心臓や脳の細い血管を塞いでしまう病気が「心筋梗塞」と「脳梗塞」です。
DHAは血液が固まる過程で重要なたんぱく質「アラキドン酸」の作用を抑制することにより、血液が固まることを防ぐ効果が認められています(8)。
また、DHAが赤血球の膜に取り込まれて、血液をさらさらにすることも示されています(9)。
血行を改善する
加齢や生活習慣病が原因で、血管が硬くなり、血液の流れが悪くなる病気を「動脈硬化」と言います。
動脈硬化は進行すると、やがて心筋梗塞や脳梗塞を引き起こし、命を落とす危険な状態です。
日本人を対象として、DHAの血中濃度と血管の硬さを比較したところ、DHAの血中濃度が高いほど、動脈硬化のリスクが低いことが分かりました。
DHAが血管の柔軟性や弾力性を向上させることにより、動脈硬化を予防すると考えられています(10)。
アレルギー症状を抑える
アレルギー症状とは、体を守る免疫反応が本来よりも過剰に起こることにより、自分自身を傷つけてしまう反応のことです。
体を守るために生成されるたんぱく質が過剰になることによって引き起こされます。
妊娠中のアトピー性皮膚炎の母親に対して、オメガ3脂肪酸が含まれるカプセルを飲ませたところ、出生児のアトピー性皮膚炎の重篤な症例数が大きく減少したことが分かりました。
また、DHAをサプリメントとして摂取すると、アトピー性皮膚炎が改善される、という研究結果も得られています(11)。
DHAを摂取することにより、花粉症、喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状を予防・改善できることが示唆されています。
目の健康をサポートする
DHAは脳や神経細胞のほか、目の光を感じる網膜の細胞にも豊富に存在しています。目の健康維持のためにも重要な栄養素です。DHAが欠乏すると、視覚障害が起こることもわかっています。
DHAと眼科疾患の関連性はいくつか報告されています。
例えば、網膜に異常がある遺伝子疾患<網膜色素変性症>、加齢に伴い、網膜に出血やむくみが出て、視力が低下する<加齢黄斑変性>や、視神経に障害をきたして視野が狭くなる<緑内障>などです。DHAの摂取量と疾患のリスクとの関係性が認められています(12,13)。
DHAを摂取することは、目の健康を維持し、病気の予防につながることも期待されます。
がんの予防になる
DHAの摂取はがんの予防につながることも示されています。
実際に、大腸がん(14)、乳がん(15)や膵臓がん(16)など、様々な種類のがんの発症リスクと魚の摂取量について、関連性が認められています。
これは、がんの増殖を促進する「プロスタグランジン」というたんぱく質の作用を抑制することによると考えられています(17)。
DHAの1日の摂取量の目安は?
では、1日当たり、どれくらいのDHAを摂取すればいいのでしょうか。
男女別・年齢別1日摂取量の目安
厚生労働省によって「日本人の食事摂取基準(2025年版)」が取りまとめられました。この報告書によると、日本ではDHAの1日摂取量の目安はありませんが、オメガ3脂肪酸の1日摂取量として基準が設定されています(18)。
オメガ3脂肪酸の1日摂取量の目安は表1の通りです。
表1:性別・年齢別のオメガ3脂肪酸の1日摂取量の目安
年齢 |
男性 |
女性 |
生後0ヶ月~2歳 |
0.7~0.9g |
|
3歳~11歳 |
1.2~1.7g |
|
12歳~49歳 |
2.0~2.2g |
1.5~1.7g |
50歳以上 |
2.3g |
2.0g |
妊婦・授乳婦 |
- |
1.7g |
欠乏症を予防するという観点から目安量が設定されていますが、年を重ねるにつれ、1日摂取量を増やすことが推奨されています。
また、妊娠中は胎児の体の成長のために、より多くのオメガ3脂肪酸の摂取が必要であると考えられています。従って、妊娠可能年齢に該当する女性の摂取量に基づいて、目安量はやや多めに設定されています。
サプリメントは必要?
「魚が健康にいい」ということは皆さん十分理解しているでしょう。しかし、魚の消費量は年々減少しています。
その理由として、「価格が高いから」、「調理が手間だから」という意見が挙げられています(19)。また、海産物にアレルギーがあって食べられない、という方もいるでしょう。
そういうときは、魚油を原料とした「DHA+EPAサプリメント」を活用しましょう。サプリメントであれば、魚を焼く手間もかかりません。一度に30日分のDHAを購入することも可能なので、手軽に安く済みます。
日頃の食生活で不足しがちなDHAをサプリメントで補ってみてはいかがでしょうか。
DHAを豊富に含む食品は?
それでは、DHAを豊富に含む食品についてご紹介します。
魚介類や海藻類
魚由来の脂質はオメガ3脂肪酸が豊富で、DHAは特に、カツオ、マグロやマイワシなどの青魚に多く含まれています。
魚に多く含まれる理由として、植物プランクトンを始まりとする食物連鎖で増加したものと推測されています(20)。
また、イカ、トビウオ、貝類や海藻類の脂質にもDHAは多く含まれていますが、脂質量自体が少ないため、摂取できる量はそれほど多くありません。
そのほかの食材
魚介類のほか、豚肉や鶏肉などにも含まれていますが、魚介類に含まれる量と比較すると、極端に少ないです。肉類や乳製品だけでDHAを補うことは難しいでしょう(20)。
DHAを効率的に摂取する方法とは?
加熱すると減少する?
DHAを効率的に摂取するには、刺身などの生で食べることがおすすめです。
イワシの研究では、焼く、揚げる、煮るなどの調理を加えると、DHAの含有量が減少することが認められています(21)。
また、すり身や干物にした場合、DHAの含有量はほとんど変わらず、特に、干物は食べる重量当たりのDHA含有量が多いため、効率的に摂取できる機能性食品であるといえます(22,23)。
食材の組み合わせを考える
魚と別の食材を組み合わせることにより、DHAを効率的に摂取できます。どのような食材を組み合わせるといいのでしょうか。
DHAの酸化を防止する食材と一緒に食べる
DHAは非常に酸化しやすく、酸化によって<魚臭>を発生させます。DHAが酸化してしまうと、魚の風味が劣化するだけでなく、体に吸収されると、毒性を示すこともあります。
DHAの酸化を防止することは、効率的な摂取につながります。酸化防止作用がある栄養素として、「ビタミンE(トコフェロール酸)」があります。
例えば、ビタミンEが豊富なかぼちゃやナッツ類と一緒に魚を食べるのもいいでしょう(24)。
また、同じく酸化を防止する栄養素「ビタミンC(アスコルビン酸)」との組み合わせもいいようです(25)。
ビタミンCが豊富なキャベツと一緒に魚を食べたり、レモンをかけて食べたりなど、ビタミンCを意識するといいでしょう。
α-リノレン酸と組み合わせる
それほど多くはありませんが、DHAと同じくオメガ3脂肪酸であるα-リノレン酸からDHAが生成されます。
魚の刺身に、α-リノレン酸が豊富な<えごま油>をかけて、カルパッチョにするというのも一つの手です。DHAも、DHAの元となるα-リノレン酸もたくさん摂取できるでしょう。
DHAの副作用は?摂り過ぎたらどうなる?
DHAが体にいいからといって、摂り過ぎると逆に副作用が起こることがあります。
スイス・ジュネーブ大学の研究によると、DHAの過剰摂取により、心房細動(不整脈の一種)のリスクが高まったことが明らかとなりました(26)。
健康を気遣って、DHAを摂り過ぎてしまうと、心臓に負担がかかりますので注意しましょう。
特に、サプリメントの過剰摂取には注意が必要です。体にいいと考えて、表示されている用量を超えて摂取してしまうと、副作用を起こしかねません。サプリメントは飲み方と量を守って、正しく飲みましょう(2)。
DHAを積極的に摂取して、健やかな暮らしを送りましょう
水産庁の報告によると、近年、肉類の消費は増加傾向にありますが、魚を食べる量は年々減少しています。魚介類の消費が減少しているため、自ずとDHA摂取量も減少していることを意味します。
魚をたくさん食べて、DHAを積極的に摂取することが、健康的な暮らしをするうえでとても重要です。
もし、魚が嫌い、調理が面倒という場合は、魚油を原材料とした「DHA+EPAサプリメント」を有効活用しましょう。
ヘルス医療編集チームは、医師や医療関連の専門家が集まり、最新の医療知識をわかりやすく、日常生活に役立つ形でお届けしています。
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参考文献
References
- e-ヘルスネット「不飽和脂肪酸」
- DHA・EPA協議会 Q&A
- ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)の生理機能
- DHA Effects in Brain Development and Function
- 網膜機能におけるドコサヘキサエン酸(DHA)の役割
- アルツハイマー病と食事栄養-とくに銅・亜鉛とドコサヘキサエン酸
- 食と栄養による脂肪組織の機能制御
- DHAの生理作用とその微生物生産
- ドコサヘキサエン酸の赤血球変形能に及ぼす影響
- 魚由来のn-3系多価不飽和脂肪酸であるDHAは心臓血管の潜在性動脈硬化を予防する可能性
- エイコサペンタエン酸・ドコサヘキサエン酸の抗アレルギー作用について
- 網膜機能におけるドコサヘキサエン酸(DHA)の役割
- 米国における食事性酪酸摂取と緑内障との関連
- ドコサヘキサエン酸による大腸発がん抑制に関する研究
- ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)による乳がんリスク低減の可能性
- Fish, n-3 PUFA consumption, and pancreatic cancer risk in Japanese: a large, population-based, prospective cohort study
- Docosahexaenoic acid and eicosapentaenoic acid strongly inhibit prostanoid TP receptor-dependent contractions of guinea pig gastric fundus smooth muscle
- 日本人の食事摂取基準(2025年版):各論 脂質
- (2)水産物消費の状況
- 魚食とDHA・EPA
- イワシの調理における脂質劣化の動向
- 揚げかまぼこ製造工程におけるEPAとDHA量の変化
- 魚介類の干物製造工程におけるEPAとDHA量の変化
- 魚油の風味劣化と抗酸化
- 高度な酸化安定性を付与したDHA・EPA油”プロレア®”の開発と応用展開
- Effect of Long-Term Marine ω-3 Fatty Acids Supplementation on the Risk of Atrial Fibrillation in Randomized Controlled Trials of Cardiovascular Outcomes: A Systematic Review and Meta-Analysis
- DHAの働き、含まれる食品と副作用の完全ガイド
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