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DHA・EPAサプリは効果なし?4つの原因と選ぶ際の4つのポイント

栄養編集チーム 管理栄養士
公開日
2024.12.31
最終更新日
2025.02.19
DHA・EPAサプリを積極的に摂っているのに「健康を感じられない」「効果がない」という声を聞くことがあります。 DHAやEPAは健康に欠かせない成分であるはずなのに、なぜこんな声が出てくるのでしょうか?実はただやみくもにDHA・EPAサプリを摂っても、健康につながらない場合があるのです。
そこで、本記事ではDHA・EPAに期待される効果、DHA・EPAサプリの摂り方や選び方を解説し、しっかりと健康につなげられるようにします。
DHA・EPAは体の中でどう役立つの?
DHAやEPAはオメガ3脂肪酸で、体内で生合成できず、不足すると体にさまざまな症状が出てしまいます。
人体に必須の成分であると同時に、多くの研究により、さまざまな効果が期待されることも分かってきました。
ここではDHAやEPAに期待される効果や、両方を併せて摂ることで期待される効果について、いくつかの研究論文を紹介していきます。
DHAに期待される効果
DHA単独では、がん細胞、生殖に関する研究結果が報告されています。
がん細胞に関する効果
研究レベルでは、DHAががん細胞の生存率を低下させ、増殖を減少させる細胞応答を増強することが示されています。また、DHAが化学療法の治療成績を改善することを示唆する研究結果も出ています。(1)
DHAは、正常細胞に対して毒性を示すことなく、一部のヒトがん細胞のアポトーシスを誘導することが示唆されています。(2)
精子に関する効果
無精子症や乏精子症などの男性の精子は、正常な精子と比較して、DHAのレベルが低いとの結果が出ています。(3)
早産のリスク低下に関する効果
妊娠中の母親にDHAまたはプラセボを摂取させた、2件のランダム化比較試験において、早産のリスクが低下したとの結果が出ています。(4)
EPAに期待される効果
EPA単独での研究結果は、DHAよりも少ないですが、心疾患との関連が報告されています。
参考記事:DHAの効果は?頭から全身までのDHAの予防・改善効果
心疾患に関する効果
2008年に発表された臨床試験では、脂質異常症治療薬スタチンを服用している患者に対し、高純度のEPA製剤(1.8mg/日)を追加投与するグループと、しないグループとを比較したところ、虚血性心疾患の発症リスクが減少することが示されました。(5)
DHAとEPAの併用で期待される効果
DHAとEPAの併用では、炎症や脳、精神疾患などとの関連を示唆する結果が報告されています。
魚油サプリメントの摂取によりEPAとDHAの摂取量を増やすことで、炎症を伴う関節リウマチなどの発症率を下げるとの研究結果があります。(6)
DHA単独あるいは、EPAとの併用が、軽度の記憶障害を有する高齢者の記憶機能の改善に寄与することを示唆する研究結果が出ています。(7)
ノルウェーでの成人および高齢者21,835人を対象とした調査では、タラ肝油(EPA:約300~600mg/日、DHA:約300~600mg/日)を毎日摂取している人は、うつ病の割合が30%少ないとの結果が出ています。(8)
2018年にメタアナリシスによって、複数の研究結果を分析した結果、DHAとEPAは血圧低下に寄与することが示唆されました。(9)
DHA・EPAサプリは効果なしと感じる4つの原因
DHA・EPAサプリを積極的に摂っているのに、健康を実感できないという方がいます。しかし、それはDHAやEPAという成分に原因があるわけではありません。摂っているDHA・EPAサプリの品質や摂り方に問題があると考えられます。
ここでは、DHA・EPAサプリで健康を感じられない原因について、解説していきます。
1.含まれるオメガ脂肪酸の濃度が低い
まず、考えられる原因として、サプリに含まれるDHAやEPAの濃度が挙げられます。DHAやEPAの濃度が少なければ、体内で十分に作用しません。
DHAやEPAは不飽和脂肪酸の一種で、中でもオメガ3脂肪酸に該当する成分です。厚生労働省が出している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」には、DHAやEPA個別の摂取基準はありませんが、オメガ3脂肪酸全体での摂取基準が設けられています。
オメガ3脂肪酸の食事摂取基準(g/日)
引用:日本人の食事摂取基準(2020年版)(10)
年齢 |
男性 |
女性 |
1~2歳 |
0.7 |
0.8 |
3~5歳 |
1.1 |
1.0 |
6~7歳 |
1.5 |
1.3 |
8~9歳 |
1.5 |
1.3 |
10~11歳 |
1.6 |
1.6 |
12~14歳 |
1.9 |
1.6 |
15~17歳 |
2.1 |
1.6 |
18~29歳 |
2.0 |
1.6 |
30~49歳 |
2.0 |
1.6 |
50~64歳 |
2.2 |
1.9 |
65~74歳 |
2.2 |
2.0 |
75歳以上 |
2.1 |
1.8 |
妊婦 |
- |
1.6 |
授乳婦 |
1.8 |
成人の場合、オメガ3脂肪酸を1日2g前後は摂る必要があります。DHA・EPAサプリを積極的に摂っていても、濃度が低ければ、全体として摂取量が足りないので、当然、健康にはつながりません。
また、普段の食生活で、魚などをあまり摂っていない場合、食事からもDHAやEPAを十分に補えていません。
その状態で、濃度が低いDHA・EPAサプリを摂取しても、全体量が足りないために、やはりDHAやEPAの恩恵は感じづらくなってしまいます。
2.含まれるオメガ3脂肪酸の質が低下している
サプリに含まれるDHAやEPAの品質が問題になることも考えられます。サプリに含まれるDHAやEPAの濃度が十分でも、劣化して、品質が低下してしまうと、正常に働きません。
DHAとEPAはオメガ3脂肪酸の一種ですが、脂肪酸は酸化による劣化を起こしやすい性質があります。酸素以外に、温度や光も劣化の原因です。
濃度が十分なDHA・EPAサプリであっても、製造から時間が経過していると、DHAやEPAが劣化して、健康につながらない可能性があります。
また、DHA・EPAサプリの保存が悪いと、短期間で劣化してしまうので、保管方法に原因があることも考えられます。
3.継続的に摂取していない
DHA・EPAサプリの摂り方も、健康につながらない原因になり得ます。まず、考えられることは継続的に摂取していない可能性です。
DHAやEPAは医薬品ではないので、摂取したらすぐ何か効果が出るという成分ではありません。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」に設定された量を毎日摂取することで、初めて健康につながる成分なのです。
DHAやEPAは普段の食生活では不足しがちな成分なので、DHA・EPAサプリで継続的に補わないと、健康を感じられない可能性が高くなってしまいます。
4.摂取するタイミングが悪い
DHA・EPAサプリを摂るタイミングが悪いことも、健康を感じられない原因の1つと考えられます。DHA・EPAサプリを摂っても、十分に消化吸収されなければ、健康にはつながりにくくなります。
医薬品と異なり、サプリメントには摂取するべきタイミングの決まりはありません。しかし、人間の消化吸収のメカニズムを考えると、適したタイミングがあるのです。
DHAとEPAはオメガ3脂肪酸の一種なので、体内で利用するためには、脂質と同じように消化する必要があります。一方、体内では食事を摂ると、含まれる栄養素を利用するために、さまざまな消化酵素が働きます。
消化酵素が活発に働いているタイミングで、DHA・EPAサプリを食べれば、最も効率的に消化吸収されることが期待されます。
DHA・EPAサプリを選ぶ4つのポイント
DHA・EPAサプリで効果を感じられない4つの原因を説明しました。4つの原因を読み替えると、DHA・EPAサプリを上手に選ぶためのポイントが見えてきます。
ここでは、しっかりと健康につなげるためのDHA・EPAサプリの選び方を解説します。
1.DHAとEPAの含有量
まず、DHAとEPAの含有量に着目して選びましょう。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」に定められたオメガ3脂肪酸の食事摂取基準と、自分の食生活を元に、足りない量を補えるものを選ぶことが大切です。
フィッシュオイルとして売られているサプリメントの中には、DHAとEPA個々の含有量が記載されていないものもあります。
量を重視したい場合は、個別に書かれているものから選ぶのが良いでしょう。
サプリメントの中には複数の成分を1粒に凝縮したものもありますが、個々の成分の配合量が少ない場合があるので、注意が必要です。
2.DHAとEPAの濃度
DHAやEPAの含有量だけでなく、DHAとEPAサプリメントの「オメガ3脂肪酸の濃度」も大切なポイントです。
DHAとEPAのサプリメントは、主にフィッシュオイルを原材料として作られています。「オメガ3脂肪酸の濃度」とは、1粒に含まれるフィッシュオイル(精製魚油)の中のオメガ3脂肪酸(主にDHAとEPA)の割合を意味します。
濃度が高いほど、1粒に含まれるDHAとEPAの量が増え、余計な脂肪酸や油を摂取することが減ります。
逆に、オメガ3脂肪酸、DHAとEPAの濃度が低いものを選ぶと、余分な脂肪酸を摂ってしまい、体に負担がかかることがあり、DHAやEPAの効果を実感しにくくなることもあります。DHAやEPAサプリメントや魚油製品を選ぶときは、「オメガ3脂肪酸の濃度」をしっかり確認することが大切です。
3. オメガ3脂肪酸(DHA/EPA)の質
DHAやEPAサプリメントの主な成分はフィッシュオイル(精製魚油)です。フィッシュオイルの鮮度を評価するためには、酸価(Acid Value)、過酸化物価(PV)、全酸化値(TOTOX)といった指標が使われます。
鮮度というのは、製造日や保存期限のことではなく、フィッシュオイルに含まれるオメガ3脂肪酸(主にDHAやEPA)の酸化の進み具合を示すものです。
オメガ3脂肪酸は不飽和脂肪酸に分類され、酸化しやすい性質を持っています。
フィッシュオイルに含まれるオメガ3脂肪酸も同様に、酸化や腐敗を防ぐために保存方法に注意が必要です。特に温度や光などの環境要因が影響を与えるため、適切な保存が重要です。
また、DHAやEPAサプリメントには抗酸化物質が含まれているかどうかも確認することをおすすめします。
抗酸化物質が含まれていれば、酸化を防ぎ、サプリメントの品質を長く保つことができます。
新鮮で安定したDHAやEPAを摂取することで、より良い健康効果を実感できるでしょう。鮮度が高い製品を選ぶことが、効果を最大限に引き出すためのポイントです。
4.魚油の精製方法はrTG 型(Re-Esterified Triglyceride)
精製方法により、フィッシュオイルにはrTG、EE、そしてTGという3種類の型があります。フィッシュオイルに含まれるDHAとEPAはは非常に酸化しやすくなり、不安定です。酸化したフィッシュオイルにはDHAとEPAの含有量が減少します。
このため、DHAとEPAを効果的に摂取するためには、フィッシュオイルの高い安定性が求められます。
3種類の型の中で、rTGのフィッシュオイルは吸収率と濃度が最も高く、また酸化しにくいため、非常に高い安定性を誇ります。そのため、rTGのフィッシュオイルを選ぶことで、より効果的にDHAとEPAを摂取できます。
5.重金属汚染を避け
魚油やDHA、EPAサプリメントを選ぶ際には、安全な魚由来の製品を選ぶことが重要です。特に、遠洋で獲れる魚は、重金属汚染のリスクが低いため、より安全とされています。
6.国際認証を受けたDHA/EPAサプリを選ぶ
国際的な品質基準を満たすDHA/EPAサプリを選ぶことも大切です。
アメリカのUSP認証やヨーロッパのCEP認証を受けた製品を選ぶことで、製品が厳しい品質管理のもとで製造されていることが確認できます。
これらの認証は、製品が安全で効果的であることを証明するものであり、cGMP(に基づいた製造が行われていることを保証します。
7.容器の密閉性
DHAとEPAは劣化しやすいため、容器の密閉性も選ぶための重要なポイントです。特に酸素が大敵なので、余分な空気を追い出して密閉できる、チャック袋になっているものが良いでしょう。
また、直射日光などの光も劣化の原因になるので、光を通さない素材の容器や、褐色の容器のものを選ぶのがベストです。
8.飲みやすさ
飲みやすい形状であることは、継続する上で重要です。大きくて、飲み込みづらいものを選んでしまうと、億劫になり続けられなくなってしまいます。
また、DHA・EPAサプリはカプセルになっているものが多いため、タブレットのように砕いて飲むことができません。
大きなものを飲み込むのが苦手な人は、パッケージやウェブサイトに大きさが分かるように書かれているものから選ぶのがおすすめです。
DHA・EPAに副作用はあるの?摂り過ぎには注意が必要
DHAやEPAは不足しがちな成分ですが、摂り過ぎた場合についても知っておきましょう。
ヨーロッパでは1日5g、アメリカでは3gの摂取において、特に問題ないとされています。(11)
日本でも「日本人の食事摂取基準(2020年版)」に定められたオメガ3脂肪酸の食事摂取基準は定められていますが、上限は設定されていません。
しかし、スイスの研究チームがメタアナリシスによって、複数の研究結果を分析した結果、オメガ3脂肪酸を食事以外から1年以上にわたって摂取すると、心房細動のリスクが上昇することが示唆されました。(12)
また、ラットでの実験において、オメガ3脂肪酸の過剰摂取により、出血性脳卒中のリスクを高め、その後の回復にも影響が出ることが示唆されています。(13)
体に良いからと、やみくもに摂ることは避けて、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」に定められた量を目安にするのがおすすめです。
まとめ
DHAとEPAに期待される効果、DHA・EPAサプリの効果を感じられない原因や、摂り方や選び方、摂り過ぎに注意することについて説明しました。
DHAとEPAは健康に役立つ成分ですが、上手に活用するには、押さえるべきポイントがいくつかあります。
そして、DHAとEPAは普段の食事では不足しがちな成分です。日々の食事の栄養バランスも見直しつつ、DHA・EPAサプリを上手に用いて、より健康につなげていきましょう。
ヘルスカレッジ栄養編集チームは、管理栄養士や食の専門家が集まり、最新の栄養情報をわかりやすく、毎日の生活に役立つ形でお届けしています。
私たちの目標は、栄養に関する知識をシンプルに説明し、皆さんが健康的な食生活を楽しみながら実践できるようサポートすることです。

参考文献
References
- A Critical Review on the Effect of Docosahexaenoic Acid (DHA) on Cancer Cell Cycle Progression - PubMed
- Docosahexaenoic Acid Induces Oxidative DNA Damage and Apoptosis, and Enhances the Chemosensitivity of Cancer Cells - PubMed
- Sperm fatty acid composition in subfertile men - PubMed
- Predicting the effect of maternal docosahexaenoic acid (DHA) supplementation to reduce early preterm birth in Australia and the United States using results of within country randomized controlled trials - PubMed
- Effects of EPA on coronary artery disease in hypercholesterolemic patients with multiple risk factors: sub-analysis of primary prevention cases from the Japan EPA Lipid Intervention Study (JELIS) - PubMed
- Fatty acids from fish: the anti-inflammatory potential of long-chain omega-3 fatty acids - PubMed
- Docosahexaenoic acid and adult memory: a systematic review and meta-analysis - PubMed
- Role of Omega-3 Fatty Acids in the Etiology, Treatment, and Prevention of Depression: Current Status and Future Directions - PubMed
- Effects of EPA and DHA on blood pressure and inflammatory factors: a meta-analysis of randomized controlled trials - PubMed
- 1―3 脂質
- DHA・EPA協議会 - Q&A
- Effect of Long-Term Marine ɷ-3 Fatty Acids Supplementation on the Risk of Atrial Fibrillation in Randomized Controlled Trials of Cardiovascular Outcomes: A Systematic Review and Meta-Analysis - PubMed
- Dietary supplementation of omega-3 polyunsaturated fatty acids worsens forelimb motor function after intracerebral hemorrhage in rats - PubMed